不確実なことへの対応2018年10月20日

NHKの記事(「詳報 東電刑事裁判『原発事故の真相は』 第32回公判 2018年10月19日」)によると、武黒元副社長は

長期評価の「三陸沖から房総沖のどこでも大きな津波の可能性がある」という見解については学者でも意見が分かれ信頼性も低いという報告を受けたと証言しました。さらにこの報告をどう受け止めたか問われると「吉田は計算結果は信用できないというかあてにならないというかわからないことが多いと言っていた。専門家に検討を依頼するのは当たり前だと思った」

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東京電力の原子力部門のトップを務め責任ある立場にあったとして謝罪した武黒元副社長。事故はどうすれば防げたのか。最後に指定弁護士から問われると「なかなか答えられないほど難しい。 総合的に考えないと、不確実であいまいなことへの対応は難しく、当時、私としては懸命に任務を果たしていた」

と述べたそうだ。

確かに、不確実なことを根拠に莫大な費用を掛けて津波対策をするというのは企業経営上あり得ないだろうから、「専門家に検討を依頼するのは当たり前」である。しかし、事は原発の安全性に関わることである。一旦事故になれば、その被害は極めて広範囲かつ長期にわたる。たとえば、橋梁に問題が指摘されれば、まず通行を禁止したうえで問題点を検討するだろう。航空機に欠陥が疑われた場合なら、まず同型機の運航を停止し、安全性を確認してから順次運行を再開するという措置がとられるのが一般的である。ましてや原発である。比較するのもおぞましいが、大型旅客機でも人的被害は百人、経済的被害は一千億円を単位とする程度の規模だろう。これに対して、福島の事故では避難者十万人、損害額二十兆円と膨大である。したがって、専門家に検討を依頼するのなら、航空機の場合のように、原発を停止させておくべきだったのである。それができなかったのは、(東大工学部を卒業し、原子力研究所軽水炉研究室長・柏崎刈羽原子力発電所副所長などを歴任しているにも拘わらず)原発についての基本的な理解が貧弱であった者を「原子力部門のトップ」においたからであり、そこに経営上の責任があるだろう。