携帯電話とPOP2020年03月24日

携帯電話はアナログの頃から使っている。30年ほどになるが、その間の技術の進歩は目覚ましい。初めは音声のみだったが、携帯電話機に電子メールを送れるようになってから、インターネットで受信した電子メールを転送して、外出先でも着信が分かるようにしている。仕事の依頼はメールで来るので、それを逃さないためだ。着信があれば、ISPのウェブサイトにアクセスし内容を確認する。丸ごと転送すれば簡単なのだが、大きなファイルが添付されていることがあり、通信のコスト、受信に要する時間、端末側の容量の観点から、着信通知のみにしている。二度手間で面倒ではあるが、外出中も仕事を逃さずに済むので、重宝していた。

先日、長年使っていた携帯電話機を壊してしまったので、新しいガラケーに買い換えた。暫く、前の電話機と同様に使っていたのだが、新しい携帯電話機ではPOPにアクセスできることを発見し、勇んで使ってみた。親切とは言えないメニューに従って設定すると、無事にメールが受信できた。携帯電話機は紛失することがあり、その際ビジネスメールを見られてしまう可能性があるが、確認し返信したら、削除して携帯電話機には残さないようにすればよい。容量についてもパンクするおそれはないし、速度も格段に速くなっている。これは使えると思ったのだが、思わぬ現象に遭遇した。

メールの管理は自宅のPCで行っており、携帯電話機からのアクセスはあくまでも外出中の方便で、携帯電話機にはメールを残したくない。したがって、携帯電話機では受信の際メールをPOPサーバーに残すように設定した。そして、無事に受信できたので削除した。削除といってもゴミ箱に移るだけなので、ゴミ箱も空にする。と、ここで携帯電話機は驚くべき動作をした。この携帯電話機は、端末のゴミ箱を空にすると、サーバー上のメールも削除してしまうのだ。IMAPではなくPOPなので、これは明らかにバグだ。しかも、受信箱から削除する際にサーバー上のメールも削除してしまうならメールはまだゴミ箱に残っているが、ゴミ箱からの削除時点でのサーバー上のメール削除は、メールを復旧する手段がなく最悪だ。これでは、メールソフトとしては実用に耐えない。こういう状態のまま出荷するメーカーもメーカーだが、それを自社の商品として販売する携帯電話会社も無責任の極みだ。一体どんなQAをやっているのだろう。

こんなバグ付きでは使えないので、携帯電話会社に問い合わせをしてみた。そこで、さらに愕然とする事態に遭遇した。ウェブからメールフォームで問い合わせたら、操作を説明する電話窓口に電話しろという。操作ではなく仕様の問い合わせだといっても、取り付く島がない。仕方がないから、電話で問い合わせた。ところが、担当者はPOPが何なのかも知らない。ああだこうだと押し問答するうちに、POPサーバーをISPがどのように設定しているかの問題だから、ISPに聞けという。どうやら、IMAPと誤解しているようだ。POPとIMAPは違うものだと説明し、同じ機種の携帯電話機を持ってきて試してみろと要求して、漸く現象を確認した。その後の対応も実に鈍く、自社のブランドで販売している商品なのにまるで他人事。最終的に、メーカーがバグを認め、改修するそうだが、ここまでに1か月余り。しかも、改修がいつになるのか、目安さえ示さない。メールを削除してしまうことの罪深さを、通信事業者が認識していない。これが最先端の移動体通信を担う企業の実力なのだから、嫌になってしまう。

この程度の仕事をしている携帯電話会社(A社)と今後も付き合うのはご免だと思って、他の大手携帯電話会社、B社とK社についても、販売中のガラケーの仕様をそれぞれのウェブにあるメールフォームで尋ねてみた。B社は、A社と同様の過程を経た。B社のメール窓口はA社以上にレベルが低い。最悪といっていいだろう。電話窓口と何回か往復した挙げ句の口上は

恐れ入りますが、当メール窓口では、ホームページなどで
ご確認いただける取扱説明書以外の情報を
持ち合わせておりませんので、お問い合わせいただいている端末の
仕様についてご回答ができません。

そのため、端末の仕様などについては、
これまでご案内差し上げている電話窓口への
ご相談をお願いしておりました。

なお、同様の回答となる可能性がございますが、
本件については、何かご案内できることがないかも含め、
今一度端末の利用に詳しい下記電話窓口へ
ご相談をお願いいたします。

取説の情報しかないというのなら、メール窓口を設ける必要がどこにあるというのだろう。 もう一つ、A社と違うのは、実機でのテストを拒否した点。IMAPと誤解したままで、頑として理解しようとせず、ISPに聞けの一点張り。しかも、その間に、言ってはならないことを言った。「メーカーに聞け」。自社のブランドで販売している商品について、メーカーに聞けというのなら、自社ブランドで販売すべきではないだろう。しかも、そのメーカーのウェブページには、B社の商品として販売しているものだから問い合わせはB社に、と明記されているのだ。B社のショップに行って聞いてみたが、試用する携帯電話機はない、POPに関する仕様の資料はない、B社に聞いても答えないだろう、ウェブで噂を検索するしかない、ということだった。系列のショップの店員がこんなことを言うのだから、B社窓口の対応も宜なるかな。ついでながら、メーカーに問い合わせてみたら、携帯電話機の仕様を回答してきた。そして、「(B社)の携帯電話は、通信事業者からの委託を受け、通信事業者のご指導、仕様に基づいて製造し、通信事業者向けのOEM商品として販売されます。そのため商品のお問い合わせ窓口は、通信事業者となっております。」と付言されていた。実に尤もである。B社は自社が定めた仕様について回答できず、あるいは回答しようとせず、メーカーに聞けと言い、無関係のISPに聞けと主張したわけだ。B社との取引は止めた方がいいよ、メーカーさん。

まともな対応を示したのはK社だけだ。POPに関する仕様についての問い合わせに、当を得た回答を示した。

A社の携帯電話機のバグについてはいずれ解消するのだろうが、窓口の対応を考え、30年使ってきたA社を止めてK社に乗り換えようと考えている。