トリクルダウン ― 2015年12月23日
景気回復の恩恵が地方まで届かない、低所得者まで届いていないなど言われるが、そもそも届くはずのものなのだろうか。国民生活基礎調査のデータから所得の5分位別で見た平均所得を調べてみた。
1985年から2013年までのデータを短期的な変化や誤差を均すため過去3年間の移動平均をとってグラフにしてみた。グラフから、所得は1985年以降増加し、1995~98年をピークとして、それ以降は減少傾向にあることがわかる。この間、1995年の阪神淡路大震災、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災を経験しているが、全体としての傾向に目立った変化は見られない。それだけ、社会経済全体の推移を反映するものなのだろう。
下のグラフは、最下位と最上位の比である。貧富の差はほぼ一貫して拡大していたが、2000年を過ぎた頃からは漸減傾向がわずかに見られる。
さて、所得の増減を5分位別に見てみる。1985年以降ピークを付けた年は、分位によって異なり、それぞれ1995年、95年、95年、97年、98年である。その間の増加率は1.15、1.25、1.29、1.33、1.37、逆にピークから2013年までの減少率は0.77、0.76、0.78、0.82、0.83である。つまり、この30年ほどでは、所得が増加局面は富裕層の方が長く続き、大きく増え、減少局面は貧困層の方が早く始まり、大きく減少しているのである。
こうしたデータを見ると、トリクルダウンがあったとしても、最下位層の浮上には繋がっていないことがわかる。富める者はさらに富み、貧しい者はさらに貧しくなるのが、トリクルダウンの現実なのだろう。経済に景気の上昇下降は付き物であるから、所得の増減はある。しかし、その増減によって、富裕層は富み、貧困層は貧する。実際、1985年に比較した2013年の所得は0.89、0.95、1.00、1.09、1.14である。中間層は差し引きゼロだが、下位層は減少、上位層は増加している。
失われた20年などと言うが、その後半に貧富の差は減少傾向に入っている。社会経済は戦後の成長を是とする姿から、軋みつつ、形を変えようとしているのはあるまいか。そういうとき、えてして昔の夢をもう一度と考える「反動的」な動きが生ずる。現政権はそうした時代の徒花なのだろう。
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