そうした批判は慎め2016年01月20日

朝日新聞の記事(2016年1月19日23時49分付け「憲法改正、社民・福島氏と首相が舌戦(焦点採録)」)に、面白い件があった。

福島氏 内閣限り(の政令)で法律と同じ効力を持つことができれば、ナチス・ドイツの国家授権法と全く一緒だ。

首相 ナチスの授権法という、いささか限度を超えた批判があった。我々が出している緊急事態に関する憲法改正の草案は、諸外国に多くの例がある。多数の国が採用している憲法の条文だろうと考える。ぜひそうした批判は慎んでいただきたい。

この人は、本当に、批判されることが我慢ならないようだ。反論も、まるで子供。「みんな持ってるから、あの玩具買って」と言っているのと同じレベルだ。何でこんな程度の人が首相をやっているのだろう。こういう人を首班指名する自民党に投票した国民も同じレベルだということなのだろう。

ところで、「限度を超え」るというのは、どういう意味だろう。首相閣下に対して不逞だということだろうか。福島氏は法レベルの政令が出せるという点で同じだと指摘したのだから、そうではないことを示さなければ反論にはならない。他国にもあるというなら、その実例を列挙し、その規定が自民党憲法改正草案と一致することを示さなければならない。何せ、この内閣には、内閣官房長官が「安保法案は合憲だという人もたくさんいる」と主張し、挙げて見ろと言われて一人しか挙げられず、挙げ句に「数の問題じゃない」と開き直ったという前科があるのだ。

だいたい、他国にあるから我が国にも、というのは子供の論理だろう。論語に「和して同ぜず」という言葉があるが、道徳教育が大好きなこの人にしては随分と反道徳的だ。同じ論理展開をすれば、他の多くの国が軍隊を持っているのだから我が国も攻撃力を有する軍隊を持つ、少なくとも5か国(安保理常任理事国)が核兵器を持っているのだから我が国も持つ、他の多くの国が捕鯨に反対しているのだから我が国も捕鯨を止める、他の多くの国で夫婦別姓なのだから我が国でも別姓にする、という結論がありうるだろう。何故そうしないのだろうか。

共産・仁比聡平氏 安倍政権は戦争法を強行した。「戦争法廃止」の世論は広がるばかりだ。

首相 国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な法制だ。相当の審議の上、野党3党に賛成していただき、成立した。また、多くの国々から法案に対する理解と支持が寄せられているから、戦争法でないことは明らかだ。

これも、反論になっていない。「強行した」と批判されているのだから、「強行」ではなかったことを示さなければ反論にならない。「野党3党」が賛成したからといって委員会での採決が「強行」でなかったことにはならないし、国民の多数が反対しているのだから、国民に対して「強行」したことは確かだ。しかも、世論が反対しても押し通す必要があることがある、などと言っていたのではなかったか。

「多くの国々から法案に対する理解と支持が寄せられている」と、何故「戦争法」ではないのか。論理になっていない。第二次大戦前夜、西側の多くの国が防共のためにナチスを支持または黙認した。それは正しいと言うことだろう。

ナチスもまた、強権・戦争への序奏として、アウトバーンを建設して経済を建て直そうとした。アベノミクスを思わせるが、しかしナチスはアウトバーンを遺しても、アベノミクスは何も残さないだろう。

TPPへの参加は民主党政権のときからだし(そのとき自民党は思い付きで言うなとクレームを付けた)、女性の社会進出は「山ガール」「歴女」などという形で2000年代からすでに始まっていたし、一億総活躍社会は歴代の政権がそれぞれのネーミングで謳っていた。日本食ブームは1970年代からのことだし、訪日観光客の増加も現政権以前から始まっている。それに反して、株高は官製相場、輸出企業の利益は円安によるもの。好循環が生まれるはずだったのに、海外工場の国内回帰は遅々として進まず、賃上げは政府の介入によるもの。設備投資が動かないから、またもや介入している。就職活動を夏に延ばせと言っておきながら、問題が生ずると、口をつぐんで知らぬ顔。オリンピックの誘致でお祭り騒ぎをしたが、その後は不始末。華々しいときだけしゃしゃり出る。何ともはやの政権だ。

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